量子コンピュータSimulatorを開発しました+量子アルゴリズムの練習をした→悲しい事実に気づく(1)

なぜ量子コンピュータを作ったのか

こんにちは.

今回は,唐突に思いついて作った量子コンピュータシミュレータと,その量子コンピュータを使った量子アルゴリズムの構築法を勉強するための練習についてのお話です.

まず,「量子コンピュータ」と聞くと,一見難しいものと思えるかもしれません.実際,僕も数日前までにはそう思ってました.ところが,数日前に,古典コンピュータ(今皆さんが使っているものです)で数値計算を行うことによって,量子コンピュータの挙動を再現することが可能だということを知りました.このときに,量子コンピュータが実際どういう仕組みで動いているかよくわかっていないことに気付いて,文献を漁って調べてみることにしました.すると,なんだか難しそうだなぁと勝手に思っていたものは,実際にはそんなに難しくなく,再現するための数値計算の手法も難しくないことを知りました.

という経緯があって,量子コンピュータが(数値計算上では)誰にでもつくれるという考えに至り,実際に作ってみようということになりました.

量子コンピュータは何で動くか

古典コンピュータは,AND回路やOR回路などの,複数の古典ビットを何らかの物理的相互作用を用いて変化させることで,様々な情報を処理しています.このことからもわかるように,古典コンピュータの情報の最小単位は,1古典Bitという,0か1かの区別であり,これより小さな情報の単位は存在しません.普段我々が目にしている古典コンピュータは,古典Bitを用いてどのように情報を処理しているのか見ることはありませんが,中身は古典Bitの膨大な操作によって,動いています.これらは,古典Bitをどのように操作するかの技術(≒アルゴリズム)によって支えられています.

一方,量子コンピュータの動作は古典Bitによるものではありません.量子コンピュータの情報の最小単位は「量子ビット(qubit)」と呼ばれるものです.量子ビットは,0か1かの厳密な区別である古典ビットと違い,0か1かの確率的な状態を保持しています.量子ビットは古典ビットではないので,表記法も異なります.例えば,1量子ビットは,a|0>+b|1>のように表記します(ディラックのブラケット記法).ここで,a,bは複素数です.つまり,量子ビットは,0と1がそれぞれa,bだけ含まれる,という状態を保持することができるのです.もちろん,量子ビットは量子(の性質を持つもの)ですから,「観測」を行うことで0か1かが確定します.すなわち,|0>か|1>になるということです.どちらに確定するかは,もともとの量子ビットの状況(a|0>+b|1>)に応じて確率的に決まります.具体的には,a|0>+b|1>である量子ビットが|0>になる確率は,|a|^2で,|1>になる確率は,|b|^2です(このことからもわかるように,|a|^2 + |b|^2 = 1 が満たされる必要があります).ここで重要なポイントは,我々は量子ビットの状態を「観測」せずに知ることができないということです.これは,a,bを直接的に知ることができないということを表しています.

もう一つ,量子ビットについての重要なポイントがあります.それは,量子の「もつれ(entanglement)」です.量子のもつれとは,簡単に言うと,複数の量子Bitがあったとき,複数の量子Bitを観測したときの確率論的独立性がない状態のことです.具体例をあげてみます.今,2つの量子ビットX,Yがあったとします.X,Yがもつれていないときは,XとYを観測したとき,観測されたXの値が0,1どちらであっても,観測されたYが0,1を取る確率は,変わりません.これは,2つのさいころをどうじに投げた状況に似ています.一方のサイコロの目が1だろうが,2だろうが,もう一方のサイコロの目は等しく1/6ですよね.しかしながら,X,Yがもつれているときは,Xの値が0,1どちらになるかによって,Yが0,1どちらになるかの確率が変わってしまうのです.サイコロの例でいうと,2つのサイコロを同じ向きで完全に固定したときに似ています.一方のサイコロの値が1であったら,もう一方は1でしょう.もちろん,一方のサイコロの値が1であったら,もう一方は奇数が出やすくなる,のような例もありですね.このようなもつれ,の状態は,もはや|X>=a|0>+b|1>,|Y>=c|0>+d|1>のような表記はできません.量子がもつれているような状態を表記するためには,|XY>=e|00>+f|01>+g|10>+h|11>のようにします.このような状態の量子ビット群では(X,Y)が(観測したときに)(0,0)を取る確率がe^2,(0,1)を取る確率がf^2,…ということを意味しています.ここまでくればお気づきでしょうが,(任意にもつれさせることのできる)量子ビットがn個あれば,2^n通りの観測結果の確率を表現できます.このことは,非常に重要なことです.すなわち,適切に量子ビットを操作することで,確率的に存在しているあらゆる組み合わせの計算を一度に行える可能性があるということです.

これらの話から,量子コンピュータは,どのようなアルゴリズムで動くのか予想がついた方もいるでしょう.すなわち,量子コンピュータは,量子ビットを操作し,もつれさせ,観測を行うことで,結果を得る,という仕組みです.

量子コンピュータをシミュレートする

と,いうのが量子コンピュータの簡単な説明なのですが,文中に会ったように,結局は,量子の状態は.量子ビット数nに対して,2^n個の複素数で表現できるということです.量子の操作は,この2^n個の複素数を,量子の操作に対応する関数を用いて,写像させることで表現できます.つまり,古典的コンピュータで,量子コンピュータがシミュレート(数値計算で仮想的に実現するということ)することができるということです.よって,作りました(演繹的).

今回は,「量子コンピュータが実装できたよ」ということを示すために,簡単な量子プログラムを作って,結果どうなったかを示したいと思います.そのために,まず(このシミュレータが)量子操作としてどのような操作が行えるのかを,簡単に書いておきます.

.量子ビット数は11qbit.(なぜ,11なのかは,特別な理由はない)

・量子ビット初期化:量子ビットを,任意の確定値にする(|XYZ…>=|01010…>)

・1つの量子ビット(任意)を,パウリ行列(X,Y,Z)とかアダマール行列(H)を用いて変換する.(詳しくは後述)

・1つの制御量子ビット,1つの目標量子ビットを,パウリ行列(X,Y,Z)とかアダマール行列(H)を用いて,制御変換する.(詳しくは後述)

・2つの制御量子ビット,1つの目標量子ビットを,パウリ行列(X)を用いて,制御制御変換する.(詳しくは後述する.)

imagee
量子コンピュータシミュレータ(開発中)の画面

これらの操作機能を持った,量子コンピュータを使って,(僕が勝手に考えた問題)4=x+yを解いてみようと考えた.

…のだが,量子プログラムを書いてからとても残念なことに気づいてしまったのである.

文章が予想以上にながくなったので,これを前半として,前後半に分けて投稿することにする.つづきは,後半で.

 

 

 

 

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